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今日の一曲:Shawn Lane - Gray Pianos Flying

今日の一曲

Shawn Lane - Gray Pianos Flying (REH, full quality version) - YouTube

エレキギターの奏法、それに伴う音色

・「うまい」ということ

www.youtube.com

 エレキギターの面白い(そして難しい)ところとして、「音色」の設定の自由度が高いことがある。アコースティックな楽器だとそもそも音色は個々の楽器の種類・音域・強弱によって決まっているけれど、それを変化させることが可能なのが「電気楽器」エレクトリックギターの特徴だ。

 だからこそほかの楽器のフレーズを参照することの意味が大きくなる。個人的な整理としては、ギターならではの音型というと「ストラム(かき鳴らし)」と「アルペジオ」ぐらいなもので、とくにソロではサックス/トランペット/ブルースハープ/ヴァイオリンあたりのコピーという側面が強い。なので、最低バックで伴奏するときとソロに回るときの音色だけは分けておく必要がある。これはどんなジャンルでもそうだと思う。

 となると最低ふたつの「理想の音色」を追及することになる。そして、ソロのほうが目立ちがちなのでみんなそっちを考えたがる。ご多分にもれず僕もその轍を踏み、「チェロいいんじゃね!?」と考えるに至ったのである。

 ただギターの音色の形容としては「ヴァイオリントーン」という言い方がある。エリック・ジョンソンというギタリストを評するときに使われる。彼にはもうひとつ透き通った「クリスタルトーン」があって、それは伴奏っぽいフレーズ用だ。ヴァイオリントーンは和音より単音を多用するソロっぽいときに使う。EJ(ギタリストにはちょくちょく名前のイニシャルで呼ばれがちな人がいる)はギターの音色を変える機材の電池の銘柄、配置にまでこだわることでも有名だが、そのエピソードに説得力が出るのはほんとうに音色が素晴らしいからだ。もちろん演奏もとてもうまい。

 ここまで言っといてなんだけれども、今の気分があまりEJEJしていないので紹介はしない。ググって見つけたブログにまとまっているのでそちらにリンクをはっておく。

Eric Johnson「Venus Isle」収録「Venus Isle」 | ギタリスト イトウマサキ

 で、どうもヴァイオリントーンとは言われていないみたいだけれど、個人的にはそういっていいと思うのがショーン・レインのリードトーンだ。

 EJが(どちらかと言うと)音色面で評判なのと対照的に、ショーンはひたすらテクニック面について言われがちだ。しかしそれもしょうがない。上に貼り付けた動画の1:52くらいからがいちばんわかりやすいけれど、速弾きにも程がある。英語ではこういうのを「シュレッディング」――シュレッダーのように、「細かく刻む」という言い方をするけれども、もうみじん切りというかミキサーにかけたぐらいに刻んでいる。あまり速弾き界隈には詳しくないけれど、単純に一音一音の細かさ、そのフレーズの長さから考えて、人類史上空前絶後に最速、オリンピック速弾き部門終身名誉金メダリスト、速弾き星人との対決地球代表といってもいいんじゃないか。

 しかし、この人は難病によって活動が制限されていた(っぽい)こと、あまりセールス面を考えていない(っぽい)ことなどからか、そこまで知名度はない。ガスリー・ゴーヴァンやバケットヘッドといった変態テクニカルギタリストには影響を与えているし、ミュージシャンズミュージシャンめいたギタリスツギタリストであることは間違いないけれども、ギターを弾くアマチュアの間で人気があるとはいいがたい。

 その理由として、「うますぎてうまさがよくわからない」みたいなレベルに行っているというのがあるんじゃないか。速弾きの魅力として、音の粒が圧倒的な量で迫ってきて身震いするみたいな面がある(と思う、そんなに速く弾けないのでリスナーの立場から)けれど、ショーンの場合はフレーズが速すぎて音の粒を認識できないぐらいに液状化している。

 うまいプレイヤー、とくにヴィルトゥオーゾ的な独奏者というのは何もアスリート的に数値化できる速さの絶対値がすべてではなくて、「聞き手の予想(=聞ける範囲)をほんの少し上回れるか」というのが大事なんだと思う。速さはその魅せ方のひとつであって、それもミスと隣り合わせのスリル感あってのものということなんだろう。クラシックピアノでもマルカンドレ・アムランという人がいて、ほんとうにわけわからないぐらいうまいけれど、逆に安定感がありすぎる。

 この「聞き手の予想をほんの少し上回れるか」というのはうまさの表現としてそこそこ使える気がしている。それは例えば「速さ」「音色」「リズム感」「メロディーセンス」「引き出しの数」、いろいろな面について言えると思う。

 そして、だからこそショーン・レインはもっと評価されていい。たしかにソロは速すぎるし、教則ビデオでもディレイかけまくってんのはどうかと思うけれど、彼はほんとうに音色がきれいだし、リズムは正確かつタメが気持ちいいし、ビブラートのセンスが最高だ。ギターもメロディックにほかの楽器を支えたりもする。そしてコンポーザーとしても一流だと思う。まあ後半生のインド音楽路線はちょっとまだよくわからん。あと教則やインタビュー動画がそれなりにアップされてて、これがまた面白い。ほかの楽器をコピーしようという最初の発想の元ネタが何よりこの教則だったりする。ちなみにピアノも鬼のようにうまい。

 まとまりを欠いたけれど、ビバ・ショーン!ということでここはひとつ。〆は今後の課題だ。

 【おまけメモ】

Shawn Lane tone tutorial - YouTube

Guthrie Govan - Shawn Lane style licks lesson - YouTube