今日の一曲:Erik Satie - 1èr Gymnopédie

Satie: Gymnopédie, nr. 1 - Alexandre Tharaud - Prinsengrachtconcert 2015 - YouTube

・「無言歌」ジムノペディ

・サティはいいぞ

 

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 この曲は一種の無言歌なんじゃないかと思う。ここまでのサティのピアノ曲は(習作が続いた後)「オジーヴ」「サラバンド」など、「調性的なメロディにごてごてと声部の支えがつく」スタイルだ(なにも「簡潔な書法」一辺倒ではない)。ひとつひとつの音に過剰なまでの註釈がつき、そのため次の音に移るダイナミズムが薄い。押さえる音数が多く単純に弾きづらい上、リズムパターンが流動的すぎて逆に躍動感がない。

 そのサラバンドの書法とこの「ジムノペディ」のそれとはあまりに対照的だ。一定のリズムにのった左手の上に単音メロディの右手が流れていく簡潔さ。これを得るきっかけになったのがシャンソン的な無言歌の発想なのではないか。

 根拠は3つ。まず時期的に、この曲はサティが≪黒猫≫でピアノを弾く仕事を得た直後だったこと。次に、そもそも「ジムノペディ」という曲名じたいが≪黒猫≫に行った際の自己紹介「ジムノペディスト」に由来すること。そして、音楽的にも直前の歌曲「3つのメロディ」における4声程度のやや自制心ある和声、1小節に2分音符ふたつなどの一定のリズム型といった特徴と合致すること。

 旋法性、コード進行、ほかの2曲との関係、旋律を重視するサティの作品姿勢、プロレタリアート音楽家としてのサティ、ドビュッシー及びラヴェルからの言及、古代ギリシャという歴史の引用など、まだまだ語れる側面はある。そのあたりはおいおい語っていくことにして、まず自分のなかでの大まかな形容を出発点におくことにしてみた。サティはいいぞ。