今日の一曲:Final Fantasy X - ザナルカンドにて

Final Fantasy X OST : To Zanarkand - YouTube

・「コード」の移り変わり

・音楽を超えた音楽

 

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 あんまりまじめに音楽の勉強をしていなかった自分にとって、おそらくこの曲(というかこのサントラの楽譜)が和声、というより「コード」を意識したきっかけだったと思う。クラシックの和声ってベースそろえたりが常態化しているし、コードネームをつなげて作るというような感覚ではない。そのことに気づかされたのがこの曲を演奏しようとしたときだった。「あ、Emって書いてあるときはE-G-Bあたりが出てくるんだな」と言ったように。

 今聞いてもきれいなコード進行だしメロディも好きだ。ただ、昨日書いたサティのように一曲々々に発明/創意工夫を音楽史にぶっこんでやろうという感じはない。分析もショパン風(?)のアルペジオ伴奏に2:1のリズム、5度の枠組みが基調となったメロディがのる……くらいなものだ。そこにあるのは精神性ではなく工業デザインに似た合理性=商業性だ。

 だがそれで何の問題がある?この曲は単独でクラシック音楽に張り合うものではない。ポピュラー音楽として、さらにはゲーム音楽——それもメジャーもメジャーなタイトルの、オープニングムービーに流れる曲だ。新しい響きではなく、快く耳なじみのする響きでいいんだ。そうすれば(結果的にいろいろなアレンジを許すことになるし)ゲームの看板として象徴の役目を果たすことができる。現代音楽のひとつの課題として、あまりに作曲家の権力が強すぎることにある。新しい実験はサークル内でじゅうぶんじゃないか。