今日の一曲:岡林信康 - チューリップのアップリケ

「チューリップのアップリケ」岡林信康 - YouTube

・エンヤトットの無残

・「日本的」なフォーク

 

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 この人がフォークの神様なんやで、と言われて正直びっくりした。そもそもフォークというジャンルの元気がない、社会派な歌は同時代人がフェードアウトするにつれ共感をなくす、放送禁止の歌が多いなどいろいろ理由はあるのだろうけれども、しかし一応吉田拓郎やらかぐや姫やらグレープの名前は知っていても、岡林信康のおの字も聞いたことがなかった。

 じゃあどこで知ったんやと言われると記憶があいまいだ。ナンシー関を読んでだったかもしれない。とにかく「オカバヤシノブヤス」とやらがフォークの神様であることは頭に入っていた。そしてある日ぼおっとローカル番組をみると特集をやっていたのだった。それでウィキペディアを読む程度の知識は仕入れた。興味をひかれたのは、この人がキャリアの途中で「エンヤトット」なる新ジャンルの創作にとりかかろうとしたらしいことだった。確かその番組のなかでもそういう話はしていたような気がする。ただ当時はネットの海にそのあたりの曲が浮かんでいるということもなかった覚えがある。

 そして月日は少し経ち、大型CDレンタルショップなどにもアクセスしやすい環境になったとき。「岡林信康」の棚で「エンヤトット宣言」なる曲が収録された「信康」という、ど真ん中ストレートなネーミングを発見した。そしていそいそと聞いてみたわけだ。ウィキペディアによるとロバート・フリップに日本の音ってなんやねんと言われてコノヤロ、と一念発起したらしい。わくわく。

 言っちゃ悪いですががっかりしましたよ。いや、確かにサムルノリを迎えたり、メロディもそれっぽくやったりと意気込みは伝わってきた。しかし、いやそのリズムでロックのエイトビートに対抗しますか。日本のリズム、もうちょっといろいろありませんか。そういうネガティブ印象がついたあとプロフィールをみるとなんとなく納得させられた。もともと神父の家で、ふつうの遊びや祭りにはあまり参加しなかったようだ。その下地があるからこそフリップの言葉に敏感に反応し、そしてうまく達成できなかったのだろうか。

 ということで、そのエンヤトット時代の曲ではなくフォークの神様をやっていたときの曲をのっけておく。正直フォークもあまり趣味ではないのでけっこう聞くのはきつく、はじめてきいて京都っぽい関西弁が印象的なこの曲くらいしかぱっと思い出せないのが正直なところだ。

 でもいい曲だ。フォークの生身の弾き語り形式は楽器、つまり声の良し悪しにかなり左右される。その点はほんとうに軽々とクリアしている。澄んだ、それでいながら艶のある声。この声だからこそ女児視点の歌詞も違和感なく入ってくる。しかしこれはこれで、僕の耳からするとじゅうぶんに和風に聞こえる面もある。というか海外のミュージシャンが英語詞をのっけて歌えるとは思えない。日本語が前提の、日本語がひっぱっていくメロディだ。そしてコードも、なんかここまでマイナーコードばっかりだったりというのも想像しづらい。

 なんだかあいまいにあいまいに書いてしまった。ひとつだけこれは番組でぜったい言うてた、というのが、「野球場とか行ってもみんなタン・タン・タンタン・タンって前でリズムをとる」。まあ正直これは大人数で合わせるときだったら海外でも強拍で合わせるでしょうという気がするけれども、フォアビートへの注目、そして野球場=応援歌への注目のきっかけになったのはこの発言だった。

 保険として。べつに岡林信康氏のやったことやいったことをけなしたいわけではなく、なんとなく違和感を覚えた点がいくつかあったというだけです。